出てこようとしてるトロンプルイユ

  • 石田×川面

::: 対談企画3 :::

石田剛太 × 川面千晶

ISHIDA GOTA × KAWAMO CHIAKI

川面さんは「何この時間?」というのも楽しんでくれそうだと。(石田)

石田 川面さんは『囲むフォーメーションF』に出てもらったんだけど、そん時にみんなが「川面さん面白い」ってなったのね。だから今回、女性を一人(ゲストで)呼びたいってなった時に、もう最初から川面さんの名前が挙がってた。

川面 えー、知らんかった。『囲む……』は相当自由度が高かったですよね。アドリブがすごく多くて。

石田 で、そういうのを嫌な顔をせずにやってくれたから。「そういうのを嫌がらない人」っていうのが基準じゃない? ゲストの。それはあると思う。

川面 あー、自由度高くてもいけそうな人を。

石田 そう。僕たちのやってるエチュードの稽古って、本を覚えてから稽古場で演技を固めるという、普通……普通っていうのもアレだけど(笑)。とは違って「何この時間?」っていう時間が結構あるんで。川面さんは、そういうやり方を楽しんでくれそうだなあと。でも大丈夫?「何だこれ?」って思ってない?(笑)

川面 思ってないですよー(笑)。ただ本当に、特殊な作り方だなあって。20歳ぐらいの時から年間4、5本ぐらいの舞台をやってるんですけど、それでも初めての作り方です。でも全員が俳優だけでなく、作家とか演出家の面も持ってる劇団だから、みなさんその3つのバランスの取り方が上手いですよね。

石田 へー、作家と演出家と役者の。

川面 毎日エチュードで違う言葉が出てくるのは、作家の目を持ってないと絶対できないし、(演出家の)オーダーを考えながらシーンを作っていくことも、全体の構成が見えてないとできないだろうなあと。それが多分、俳優過ぎる人だと「いや、何でこんなことしなきゃならないんだ?」みたいになるんじゃないかと思います。

石田 うーん、そういうの初めて言われたかも。

川面 俳優だけの部分が飛びぬけた人は、いろんなことに疑問を持つと思います。たとえば台本も今の時点では、(役名が)自分の名前ですよね。イシダとかカワモとか。役と自分をカッチリ分けたい人は……特に女優さんは「役になりたい」みたいな人が多いじゃないですか?(笑)普段の川面から演劇のカワモにヌルッと移るという、その加減を受け入れられるのは、そういうバランスと一緒なんじゃないかと思います。

石田 なるほどねえ。嬉しい反面、どれも中途半端なんじゃないかなって(笑)。

川面 いやいや、演劇総合芸術のバランス的な。今言葉作りましたけど(笑)。

石田 でも総合得点で戦おうという、そういう気持ちはあるね。

台詞がウケなくても「私が言ったことだからあきらめよう」と。(川面)

川面 台本をいただいた時、私がエチュードで言った言葉が本当に載っているのに、結構感動したんですよ。

石田 でも嬉しい反面さ、たまにノリで言った言葉が「え、これ本当に本になっちゃったんだ」みたいなのもあるのね。それで劇場で全然ウケなかった時に「ヤバい、こんなん言うんじゃなかった」って(笑)。

川面 でも逆に「私が言ったことだからあきらめよう」と(一同笑)。私にも責任がある、(作家とは)五分五分だと考えたら、行ける気がするんですよね。

石田 ちゃんと自分の言った言葉に責任を持つと。今回の役は、川面さんは最初の方から娼婦に決まってたよね。

川面 初日は「川面さんは娼婦か女将で」みたいな感じだったんですけど、女将は一回もエチュードすらせず(笑)、なかったことのように消え去って行きました。

石田 でも上田君はそういうことあるのね。稽古前はいろいろ考えてたけど、一回何かを試してみたらそれがハマり過ぎて、そのままの役にするという。『(建てましにつぐ建てまし)ポルカ』の(菅原)永二さんや、『(来て)けつかる(べき新世界)』の中川(晴樹)さんもそうだった。

川面 もうインスピレーションが、バババッて沸いてくるんですかね?

石田 そうかもねえ。でもあの時代は娼婦が多かったっていうし、今回の世界観を出しやすいキャラなのかもしれないね。僕は画家の一人だけど絵を描いてなくて(笑)、理論とかばっかり言ってるうるさい奴。

川面 石田さんは出ずっぱりの役だから大変ですよね。

石田 この前上田君に「休む時間いる?」って聞かれて「選べるんだ」と思って(一同笑)。でも「大丈夫だよ」って返事しておきました。だって「ちょっと休みたい」って言ったら、上田君が大変じゃん? それで台本が書けなくなる恐怖の方が……(笑)。

川面 「(石田を)ハケさせるにはどうするか?」を考えて。

石田 それで先に進めないなんてストレスを、今与えたくないという。

川面 これから衣裳とか舞台装置が入ったら、気分的にも変わりそうですよね。でも部屋の作りが、結構物が多いという設定じゃないですか? 今は全部エアーでやってるから超余裕ですけど、本当に物が増えたら……。

石田 絶対いっぱいいっぱいになるよね。

川面 その辺の恐怖が今押し寄せてますけど、何とかこなしていきたいです。

文:吉永美和子

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