出てこようとしてるトロンプルイユ

  • 土佐×木下

::: 対談企画1 :::

土佐和成 × 木下出

TOSA KAZUNARI × KINOSHITA IZURU

でーさんを最初に見た時は「ヤバイ奴おる」と思った(土佐)

土佐 でーさん(木下)と僕は今年イエティ(『コテンパン・ラリー2』)で共演してるけど、「ハイタウン(2016)」の「相撲コメディ」の稽古場で見て「ヤバイ奴おる」っていうのが、最初の衝撃やった(笑)。

木下 ありがとうございます(笑)。

土佐 お芝居でこうなるのか、普段からこういう人なのかわからんかったけど、稽古終わってからしゃべったら、普段から……意外と舞台と普段が地続きというか。

木下 まあ、そうですね。普段からヤバイ(笑)。

土佐 「ヤバイ」って言ったら、ちょっと違うな。あんまり僕らが見たことないタイプというか、まあ、面白い人やね。

木下 僕は僕が基準ですから、これが普通だと思ってますけど(笑)。でも「変やなあ」って面白さを見つけてくれて、かまってもらえるのがすごく嬉しかったりします。

土佐 多分育ってきた環境が、僕らと全然違うからやろうね。でーさんは東京芸大行って、そこから劇団四季に入って、イギリスに留学してって、何かもう芸術のエリート街道を歩いてる人じゃないですか? 僕らみたいなその辺の兄ちゃんというか、地べたをはいずり回って生きてきた人との差が(笑)。そもそもなんで、でーさんは京都で活動することになったんかなあと。

木下 留学から帰ってきた時に、当時付き合ってた彼女……今の奥さんが京都に住んでたから、結婚を機に京都に来よう、みたいなことに(笑)。もう東京には仕事のベースもなかったし、もともと好きな土地やったんで。それから関西の演劇やダンスの公演にいろいろ関わったりして、もう10年ぐらい経ちましたね。

土佐 京都10年目にして、ようやく僕らと会ったと。

木下 「ハイタウン」の時に初めて(ヨーロッパ企画を)観たんですけど、その時は内容が実験的だったこともあって、正直それほどピンと来なかったんです。でも去年の『来てけつかるべき新世界』で、もう「面白―い!!」ってなって。それで石田(剛太)さんにこっそり「出させて下さい」とお願いしたんですけど、上田(誠)さんの耳には届いてなかったという(笑)。

土佐 でもゲストを決める時、上ちゃん(上田)から「木下さんに出てほしい」って、確定事項のように聞いたなあ。別に僕や石田君が推薦したんじゃなくて。多分今回の劇に出てもらうのにピッタリだと、上ちゃんが思ったんちゃうかな。芸術の話やから。

僕の言いやすい口調まで考えてる上田さんは、やっぱりすごい(木下)

土佐 僕は今回かなり特殊な役なんで、ここではコメントせん方がいいと思う。

木下 そうですね(笑)。僕は亡くなった画家が住んでたアトリエの大家の身内で、バイトで片付けに来た人です。

土佐 やっぱり一緒に稽古し始めたら、でーさんは芸術をいっぱい勉強してきた人なんやって、ようやくわかった(笑)。稽古中に「こんなの読めるんや?!」っていうような楽譜を読んでたりするし。そんなん見てたら、この人普段トボけた雰囲気出してるけど、心の奥底では僕らのことバカにしてんじゃないかって思えてきて(一同笑)。

木下 何でそんなん言うんですか(笑)。リスペクトしてますよ。エチュードでも皆さん、ポンポン面白いこと繰り出してきて、ずっと「すげえ!」「ああ、面白いなあ」ってなってます。

土佐 そっかあ。「この学のない奴らが、芸術に触れてくんな!」って思ってるんちゃうかなあと、心配してました。

木下 全っ然してないですよ(笑)。ただ結構稽古中に疑問だったのは、初めて台詞をいただいた時に「はてさて、今の段階ではこの言葉じりを、どこまで厳密にやるべきなんだろう?」ということでしたね。

土佐 まあ、最初はそう思うよね。

木下 でも昨日、割と台詞通りに声に出して読んでみたら、やっぱりむっちゃやりやすい。すごく僕の言いやすい口調まで考えてくれてて、上田さんはすごいなあと。

土佐 やっぱり上ちゃんは「この人はこう言う方が、雰囲気が出る」と、めちゃくちゃ考えて書いてくれるから、できるだけその通りに言うようにはしてる。本番に入ると自然に変わってくる所とか、面白く成長していく所とかはあるけど。

木下 やっぱり(お客さんの)反応見てってことはありますもんね。

土佐 ただ基本は(プレビュー公演の)栗東から千秋楽まで線路をちゃんと保って、同じことを同じようにやるって心がけてるけどね。「ちょっと飽きたから変えよう」ということは、あまりない。これを最後までどんだけ鮮度保って、毎ステ毎ステやっていけるかって考え方かなあ。

木下 線路が良かったら、同じことをしててもねえ、絶対いいはずなんですよね。

土佐 それで話戻すと、今回のでーさんの役は、本当に上ちゃんが普段のでーさんに近づけて書いたんとちゃうかな? 特技的なこととか、ちょっと狂気じみた部分も含めて(笑)。

木下 多分その辺りを、面白いと思ってくれたんですかね? でも本当に皆さんお優しくて、気遣ってもらっていてありがたいなあと、改めて思います。

文:吉永美和子

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